好きな服より似合う服と言うけど

伯母は60も過ぎてから急に鮮やかな色の服を着るようになった。
親戚の間では「いい年をして」と言う人もいたけど、母は認めていた。
「あの人は若い頃に好きな服を着れなかったんだから」って。
祖母が厳しくて、暗い色の服ばかり着せられていたんだそうだ。
母はあまり気にせず何でも着ていたようだけど、「良い子の長女」だった伯母は逆らえなかったらしい。
だから祖母が亡くなった後にピンクや黄緑の、若い人向けの服をよく着るようになったみたい。

そんな話を聞くと「何でも着たいもの着ておかなきゃ」と言う気にさせられる。
「好きな服じゃなくて似合う服を」とよく言われるけど、それが幸せとは限らない。
似合う服を着た方が他人の目には魅力的に写るだろうけど、自分が鏡を見て嬉しくなれなかったら幸せとは言えない。
似合うとは言えない服を着た伯母に「きれいなの着てるね」と言うと、伯母は「あんたも好きなもん着なさい」と笑う。
ふっきれた伯母に、他人がとやかく言う必要なんかない。